俺様上司が甘すぎるケモノに豹変!?~愛の巣から抜け出せません~
 
「べっ……別に、気にしてませんから! ただもうお腹いっぱいなので帰りたいだけです……!」

うっかりこれ以上絆されないように、私は思いっきり顔を背けながら言う。

怪しさ満点なこちらの様子にも関わらず、周防さんはふっと表情を和らげると「そうか。じゃあ、そろそろ出ようか」と言って伝票を取って椅子から立ち上がった。


私がはっきりと『帰りたい』と言ったせいか、二軒目のお誘いはなかった。そのことには安心したけれど、周防さんはタクシーで私のアパートまで送っていくという。

これはいわゆる〝送りオオカミ〟というやつではないだろうかと危惧した私は、当然お断りした。

けれど今度ばかりは彼も引かず、話し合いの末、近くのタクシープールまで送ってもらうことになった。

駅前のタクシープールまでの道すがら、周防さんは私の隣に並んで歩く。

こちらが歩調を早めようが遅めようが彼はピタリと隣に並び、あまつさえ車道側に立ち車から守ってくれたり、道ゆく酔っ払いとぶつからないよう肩を抱き寄せてよけてくれたりした。

(周防さんって、彼氏になると気が利いて優しいタイプなのかも)

時々さりげなくこちらを見ては私の様子をうかがう彼の姿に、そんなことを思う。

彼女の好きそうなレストランを予約して連れていってくれて、一緒にいるときは過保護でいっぱい甘やかして、並んで歩けばこうして守ってくれる。

きっと恋人にしたらすごく幸せになれるタイプだ。おまけにルックスも肩書も完璧。
 
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