俺様上司が甘すぎるケモノに豹変!?~愛の巣から抜け出せません~
(――もし……)
もしも今の彼の態度が惚れ薬のせいじゃなかったら私はどうしていただろうなんて、馬鹿なことを考えてしまう。
惚れ薬なんてなしで本当に周防さんが私を好きになってくれて、こんなふうに優しくされたなら……私は心惹かれてしまっていたかもしれない。
だってもともと、苦手だけれど嫌いではなかった人なのだ。
厳しいけれど頼りになるし、一緒にいて楽しいと思うときもある。それに、いないと寂しい。
ただいつも私のことだけ虐めてくるものだから、苦手だっていう意識が根づいてしまっただけで。
(普段からこんなふうに優しかったらよかったのに……って、それはないか。周防さんが優しいのは惚れてる相手に対してだもんね。惚れ薬の効果がなければ、私なんて彼に優しく扱ってもらえることなんか一生ないんだから)
なんだか虚しいような寂しいような気持ちになってしまい、顔を俯かせて歩く。
するとすぐに周防さんが「どうした?」と話しかけてきた。
「なんでもないです。ちょっと考え事……今請け負ってるデザインのことで」
勝手に落ち込んでよけいな気を遣わせてはいけないと思い、すぐに顔を上げる。すると、私の顔を上から覗き込むようにしていた周防さんの顔が思わぬ近さにあって、ドキンと胸が跳ねた。