俺様上司が甘すぎるケモノに豹変!?~愛の巣から抜け出せません~
「あ……」
至近距離で彼と目が合ってしまい、気まずさからすぐ離れようとした。
それなのにどうしてか、彼の視線に絡めとられたみたいで体が動かない。
周防さんの瞳から目が離せないまま、自分の鼓動がどんどん早くなっていくのを感じたときだった。
「――……っ!」
頭のうしろを大きな手で押さえられると同時に、噛みつくように唇を重ねられた。
駅へ向かう歩道は夜でも人が行き交っていて、そんな喧騒の中でされたキスは現実感がなくまるで白昼夢みたいで――。
生まれて初めてキスをした私はただ立ち尽くしたまま目を閉じることもできず、周防さんの綺麗な顔のドアップを瞳に焼きつけることしかできなかった。
「――好きだ」
唇を離した周防さんが真剣な表情で告げたその言葉が耳に届いたとき、固まっていた私の時間が動き出した。
心臓は破裂しそうなほどバクバクしているし、顔はあり得ないほど熱くなっていくし、途端に周囲の人たちの視線や話し声が気になって仕方なくなる。
「あ、あのっ、わ……私、その、えっと」
今夜告白されてしまうかもしれないと十分警戒してきたつもりなのに、不意打ちのキスですっかりパニックになってしまった。だってまさか、こんな人の目のある場所でそんな大胆なことするなんて予想外すぎる。