俺様上司が甘すぎるケモノに豹変!?~愛の巣から抜け出せません~
 
私の十月は、「やっぱりスピリチュアルってすごい!」という感激で始まった。

それは、もうすぐお昼になろうかという午前のこと。

いつものようにクリエイティブ部門の自分のデスクで作業をしていると、駆け足で誰かがこちらに向かってくることに気づいた。

なんだろうと思って顔を上げると、珍しく興奮した面持ちの周防さんがこちらへやってくるのが見えた。そして私に向かってグッと親指を立ててみせ、屈託なく破顔する。

「今連絡がきた。勝ったぞ、オーロラ製菓のコンペ! お前のコンテ通ったぞ!」

オーロラ製菓のコンペとは、周防さんと同じチームで参加した例のコンペだ。てっきり私のCMコンテが不評で落ちたかと思っていたのに――。

「本当ですか!? やったぁ!」

一度は駄目かとあきらめたぶん、喜びもひとしおだ。ましてや私にとって今までで一番大きな案件、全国区CMなのだ。

勢いよく椅子から立ち上がり零れ落ちそうなほど目を見開くと、周防さんは腕を伸ばし私の頭をクシャクシャと乱暴に撫でた。

「ああ、よかったなあ。俺もてっきり駄目かと思ったんだけど……実ったな、お前の努力」

頬を紅潮させ我がことのように喜んでくれる周防さんの姿が胸に沁みる。コンペを勝った感激と相まって、思わず涙が込み上がってきてしまった。
 
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