俺様上司が甘すぎるケモノに豹変!?~愛の巣から抜け出せません~
惚れ薬を飲んでからというもの、周防さんは私に対して徹底的に優しい。言葉ひとつ取っても私が嫌な思いをしないよう、すごく気遣ってるのが伝わってくるくらいだ。
そんな彼が……『馬鹿』?
不思議な気がして俯いていた顔を上げると、周防さんはいつもと何ら変わらない様子で他の人と言葉を交わしていた。そして私が顔を上げたことに気づくと柔らかに目を細め、もう一度「よく頑張ったな」と褒めてくれた。
その姿からは、特に惚れ薬の効果が切れたような様子はうかがえない。
(考えすぎかな……。周防さんも嬉しくて、つい口から出ちゃっただけかもしれない)
私は改めて「ありがとうございます」と頭を下げると、崩れてしまった目もとのメイクを直すべくお手洗いへと向かった。
コンペに勝っただけではない。私の絶好調はそれからも続いた。
オーロラ製菓のCMづくりは驚くほどスムーズで、予定していたスタッフもタレントもスタジオもひとつの変更もなく押さえられ、イメージ通りの画が撮れた。
と同時に、他に抱えていた案件も怖いほどうまくいき、ロゴデザインもポスターデザインも営業に一発OKをもらうほどだ。ADの三坂さんからの修正指示は出たものの、なんだか今までよりコツを掴むのがたやすく、リテイクの数は普段の半分以下で済んだ。
(やっぱりスピリチュアルってすごい……! 占いもパワーストーンもすごいっ!)
占いの結果通りの順風満帆、そしてクリソコラのもたらすパワー通り、芸術的感性の高まりをしみじみと実感して、私は改めてスピリチュアルの偉大さを感じる。――けれど。