俺様上司が甘すぎるケモノに豹変!?~愛の巣から抜け出せません~
(あ、あれっ? 周防さん?)
廊下に出た瞬間、その先に周防さんの姿が見えて、私はあわてて体を室内へ引っ込めた。
こちらに気づかれないようそっと窺い見ると、他の社員と真剣な様子で何か話している。おそらく急遽対応しなければいけないトラブルか何かが発生したのだろう。この業界、問題が起きれば昼夜関係なく対応に追われ、泊まり込みや徹夜などもザラだ。
それから周防さんは話を終えると、手近な部屋へと入っていった。どうやら帰り損ねた模様だ。
(なんか大変そうだな……)
こっそりと周防さんの様子を窺っていた私は、彼と話していた人物がまっすぐこちらへ向かってくるのが見えて、ビクリと肩を跳ねさせた。
「なんだ、椛田。まだ残ってたのか」
「はい……お疲れ様です」
それはADの三坂さんだった。三坂さんは私の横を通って自分の席へ座ると「うーん」とパソコンの画面を悩ましそうに眺めて唸った。
「……何かあったんですか?」
もしかして周防さんのトラブルと関係あるのだろうかと思い聞いてみると、三坂さんは自分の顎髭をジョリジョリとさすりながらくたびれた口調で話しだした。