俺様上司が甘すぎるケモノに豹変!?~愛の巣から抜け出せません~
「今、周防が担当してる駅用ポスターな。採用したタレントが薬物使用で捕まっちゃって、使えなくなっちゃったんだよ」
「えぇっ!? だってあれ、もう撮り終えて納品目前でしたよね!?」
想像以上にやっかいなトラブルに、私は思わず大きな声をあげる。クライアントや制作現場の都合で急な変更は数あれど、納品目前にそれはつらい。
「ああ。だから今、周防が大急ぎで撮り直しの手配中だよ。で、モデルはタレントの事務所がお詫びにってことで人気タレント融通してくれたし、クライアントも納得してくれたんだけどさ。やっぱタレントのイメージに合わせて、ポスターのデザイン少しいじらないといけなくなってさ」
そう言ってチラリとこちらを見た三坂さんの視線に気づいて、私はハッとする。
もうクリエイティブルームには私と三坂さん以外誰も残っていない。嫌な予感がしてゴクリと唾を呑みながら後ずされば、三坂さんは聞こえよがしに大きなため息をついた。
「明日の朝までにはラフ出したいんだけど、担当してる碇が別の現場行っちゃってて連絡つかねえんだよ。あいつのことだし、もう飲みにいって泥酔しちゃってるのかもしれねえなあ」
「そ、そうですか……」
「俺が変わってやってもいいんだけど、俺も今抱えてるのが締め切り間近でなー。変わってやりたいのはやまやまなんだけどなー」
ついにはこちらをガン見しだした三坂さんに観念して、私はトボトボと席に戻ると着ていたコートを脱いでパソコンを起ち上げた。
「データ、送ってください……」
「お、やってくれるかー椛田。いやあ、お前はいいやつだな。修正指示はもう入れてあるから、楽勝だから安心しろ」