俺様上司が甘すぎるケモノに豹変!?~愛の巣から抜け出せません~
――午前一時半。
どうして自分の担当でもないのに私は夜通しの残業をしているのだろうか。そんな不満を抱く気持ちはとっくに消え失せた。
「三坂さんのフォント指示、これで本当に合ってるの……? なんか違う気がする……二パターン作っておいたほうが安全かな……」
私の独り言がブツブツと響くクリエイティブルームには、他に誰もいない。
三坂さんは三十分ほど前に『明日の朝チェックするから、完成したら俺のパソコンに送っといてくれ』と言って帰ってしまった。
三坂さんは『楽勝』なんて言っていたけれど、ラフの修正箇所はほぼ全体にわたっていて、私の腕では確実に朝までかかるシロモノだ。
「写真もこのままじゃダメだ……どうしよう、三坂さんに確認したいけど……電話出てくれるかな」
画面とにらめっこをしている目が、ぼんやりとかすんでくる。私はモニターから顔を遠ざけると瞼をギュッと閉じてから、デスクに置いておいた目薬を差した。
いったん集中力が途切れると、とたんに疲れを感じる。肩が凝っているのか頭が痛いことに気がついて、軽く眉間を押さえた。
そういえば最近、仕事の進捗が絶好調なのと周防さんのお誘いを避けるため、残業ばかりしていた。
仕事がうまくいって気分が高揚していたせいで、疲れがたまっていたことに気がついていなかったかもしれない。