俺様上司が甘すぎるケモノに豹変!?~愛の巣から抜け出せません~
意識をしてしまったせいか、それとも気がつかなかった疲れが限界を迎えてあらわになったのか、自分の体がやけに重く感じられた。
(やばい……帰りたいかも)
とりあえずひと休みして体力を補おうと椅子から立ち上がったとき、廊下から急ぎ足の靴音が聞こえ、クリエイティブルームのドアが開いた。
「……周防さん」
部屋に入ってきたのは周防さんだった。なんだか慌てたような、困ったような顔をしている。
「すみません、ラフの修正まだかかります。朝までにはなんとかしますんで……」
へらりと力なく笑う私に構わず、周防さんは表情に険しさを増しながら席まで大股でやって来た。そしてやけに神妙な面持ちで口を開く。
「悪い。三坂さんが『ラフは俺がなんとかする』って言ってくれたから、俺、てっきり三坂さんがやってるものだと思ってて……。さっき三坂さんからのメッセージでお前に任せたって知って、びっくりして……。ごめん、お前にこんなことさせて」
どうやら周防さんはラフの修正が私に丸投げされたことを、ついさっき知ったらしい。
調子よく引き受けたあげく私に丸投げして、しかも自分が帰ってからそれを周防さんに報告するとは。三坂さんの無責任っぷりにイラっとしたけれど、それよりも目の前の周防さんがあまりにも申し訳なさそうな顔をしていることの方が気になった。
「いいですよ、緊急事態ですし。それに私、普段みんなの足引っ張ってばっかりですから。せめてこういうときぐらい役に立たなくっちゃ」