俺様上司が甘すぎるケモノに豹変!?~愛の巣から抜け出せません~
周防さんみたいな今どきのイケメンって頭の固いおじさんたちには受けが悪かったりするけれど、彼はそんなおじさんのハートまで鷲掴みにしてしまう。
卑屈にならない腰の低さ、好感度抜群の爽やかスマイル、洞察力を駆使し相手をマックス上機嫌にさせるトーク。卓越したリサーチ能力は雑談や接待、手土産などに遺憾なく発揮され、その効果は抜群だ。とどめに、締めるところは締める男らしい誠実さを見せることで、どんな頑固おやじでも最後は彼に惚れこんでしまう。
まさに営業の鏡。営業をするために生まれてきたかのような男。
……けれど。当然そんな聖人君子のような人間などいるはずがなく。
「ほら、さっさと歩け。俺の進路を妨害するな」
「よ、よけて行けばいいじゃないですか! ちょっと! 小突かないでくださいよ!」
「小突かれたくなかったらシャキシャキ歩け、大福餅」
後ろから頭をノックするようにコツコツ小突きながら、周防さんは私の真後ろを歩いてくる。否応なしにスピードを上げて歩くけれど、彼の方が一、五倍くらい脚が長いのですぐ追いつかれてしまう。
営業先での仏のような人当たりの良さとは真逆に、社内での周防さんはとんだ俺様でいじめっ子だ。
特に私は目をつけられているらしく、隙あらばこのように虐げられている。ちなみに『大福』というのは、私の見た目がモッチリしていて名前が『あずき』ということから周防さんがつけたあだ名だ。……モッチリしてないもん。BMI標準だもん。
さすがに仕事中や人前では大福呼びはしないけれど、ふたりきりのときなどは彼の嗜虐心に火が着くらしく、このように動く大福餅扱いだ。ひどい。