俺様上司が甘すぎるケモノに豹変!?~愛の巣から抜け出せません~
触れてみた髪はちょっとだけ硬くて、なんとなく〝男の人〟って感じがした。
「きれーな顔……」
肌も綺麗だし、睫毛も長いし、何より目鼻立ちのバランスが完璧な顔を間近で見て、思わずしみじみと呟く。
少しだけ開かれた唇はほどよい厚みで淡い色をしていて、大人の色気をふんだんに醸し出している。この唇と何回もキスをしてしまったんだなと思うと、なんだかやけに恥ずかしくなってきてしまった。
直接触れず宙で唇の輪郭をなぞって、指をそっと引っ込める。
「……ごめんなさい……」
本当なら、この唇がキスするのは私なんかじゃないはずなのにと思ったら、胸が痛むほど申し訳なくなってしまった。
キスをするのも、献身的に看病してくれるのも、全部惚れ薬のせいだ。彼の愛情や誠意を弄んでいる自覚と、本来ならそれは私が与えられるものではないという現実がやけに苦しくい。
私はもう一度小さく「ごめんなさい」と呟くと、立ち上がってリビングを出ていった。