俺様上司が甘すぎるケモノに豹変!?~愛の巣から抜け出せません~
 
朝に私を病院まで送っていったあと、周防さんはそのまま撮影の現場入りしてしまったので会社には戻ってきていない。

彼の目がないのをいいことに、私は「少しだけやっていっちゃおう」と自分のデスクで仕事をはじめ、そのままズルズルとこんな時間まで残ってしまった。

だって会社で進めた方がすぐにADや営業部に確認とれるし、資料やサンプルもあるし、断然スムーズに作業が捗るんだもん。

……けど。さすがにこんな時間まで残っているのは失敗だった。

そう後悔したのは日が沈み気温が下がってきた頃、やたらと咳込むのを自覚したときだった。

(やば……夜になってまた熱上がってきたかも。しんどくなる前に帰らないと)

キリのいいところで仕事を切り上げ、急いで帰り支度をする。

けれど玄関ロビーに出て外から入り込んでくる外気にさらされた途端、マスクをしていたにも関わらず冷たい空気が刺激となって咳が止まらなくなってしまった。

(駄目だ、どんどんつらくなってきた。満員電車で帰るのきついな……タクシー拾おうかな)

そんなことを考え、他の人の迷惑にならないようロビーの隅へよろよろと移動しながら咳が収まるのを待っていたときだった。

「この馬鹿!」

そんな怒鳴り声と共に、乱暴ながら誰かの手が私の背を撫でさすった。
 
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