俺様上司が甘すぎるケモノに豹変!?~愛の巣から抜け出せません~
 
今朝、車で出ていった周防さんはそのまま現場から会社まで直行していたようで、私のことも車で送ってくれた。

「ごめんなさい。打ち合わせ終わったらすぐ帰ろうと思ってたんですけど、つい……。自己管理出来ていませんでした。反省してます」

助手席に座りしょんぼりと俯いて言えば、周防さんは呆れたようなため息をひとつ吐き出してから「まったく」と口を開いた。

「お前に限らずクリエイティブのやつはそういうとこあるよな。作業に没頭しすぎて自分の体力置いてきぼりにしていきなりぶっ倒れたり。……まあそういう性分なんだろうけど、社会人である以上、自己管理も仕事のうちだぞ」

もっともなことを言われ、私はぐうの音も出ない。「はい」と小さく返事するのが精いっぱいだった。

実は私、入社した年も一度やらかしてしまっているのだ。

念願の広告会社のデザイナーになれて夢心地だった私はとにかくクオリティの高いものを作ろうと不眠不休でがんばり続け……睡眠不足と脱水症状で倒れ半日入院するという失態をさらした過去があるのだ。

結局あの頃から成長していないなあと振り返り、ますます情けなさが募る。

ひっそりと落ち込んでいると、信号待ちで車を停めた周防さんが「あのさあ」と話しかけてきた。

「お前さ、うちで暮らせよ。お前の自己管理、危なっかしくて信用出来ないんだよ。すぐに仕事に夢中になるし、自分の体力把握してないし、怪しい占いとか石に頼ろうとするし」

「へ? ……え?」

周防さんの言ったことが理解できず、うっかり間の抜けた声を出してしまう。っていうか、最後なんか関係ないことディスられなかった?
 
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