俺様上司が甘すぎるケモノに豹変!?~愛の巣から抜け出せません~
――半強制的に周防さんと暮らすことになってから、一週間が経っていた。
同棲を言い渡されたときは不安しかなかったけれど、いざ暮らし始めてみると私はあまりの快適さに不安どころか満足してしまっている。
同じ広告会社とはいえやっぱり営業部の主戦力ともなるとお給料は桁違いなのだろう。周防さんのマンションはセキュリティ万全、二十四時間コンシェルジュ対応、バスはフルオート機能付き、トイレも自動洗浄というセレブ仕様なのだ。
しかも2DKの部屋はどこも広くて清潔なうえ、明るい木目とアースカラーを基調にしたナチュラルインテリアで統一されていて、心安らぐ空間になっている。
住居が快適なだけでも素晴らしいのに、さらに周防さんは料理がうまいのだ。
なんでも器用にこなしてしまう人だとは思っていたけれど、彼はすさまじく手際がいい。いつも「疲れてるから簡単なものでいいよな」と言いながら、キッチンに立って十五分くらいで主菜、副菜、ごはんにお味噌汁、それにちょっとした箸休めの食事を二人前作り上げてしまうのだから驚きだ。
周防さん曰く、『俺は男だからな。チマチマ作ってられない』とのことで、半調理品や自作の冷凍品、ときにはインスタントなどもフル活用するそうだけれど、私から見ればベテラン主婦レベルの腕前だ。
私だって独り暮らしなのだから自炊はしていたけれど、ご飯を炊くのが億劫で大抵パスタだったし、何よりこんなにテキパキ作れない。
今のところ食事作りは朝が私、夜が周防さんの担当になっていて、私は彼の作るご飯が楽しみで残業しても食事をとらず帰るくらいだ。
住居も食事も文句なしに快適。しいて不満をあげるとしたら、ひとりだったときには毎朝の習慣と化していた『占いを見てから下着を決める』という行為ができなくなったことくらいだろうか。さすがにノーブラ・ノーパンでテレビの前で待機してるわけにもいかないし。