俺様上司が甘すぎるケモノに豹変!?~愛の巣から抜け出せません~
 
「まあ私たちは長年生きてますから『また青春系かよ!』って思いますけど、実際に青春してる層――中高生は毎年新しい層が生まれますからね。我々からは使い古されたように見えても、彼らにとっては新鮮で、かつ身近に感じるのは間違いありません。今回の商品『ウォーターグミ』のターゲット層はまさにそこで、同じく十代に人気のある俳優を使うことで――」

周防さんが説明していくうちに、クライアントたちからは「まあ、そうだなあ」とか「飽和するほど鉄板ってことだもんな」などといった声が上がり始めた。

……自分の作ったものを『薄っぺらい』なんて言われて動揺して、相手のニーズも考えず反論しようとした自分が恥ずかしい。

(周防さんがいてくれてよかった……。私の反論じゃ、ただの独りよがりになるとこだった)

けれど、周防さんのおかげで風向きは少し良くなったものの確実な手応えといえるものは得られず、コンペは終わった。



「……ごめんなさい。私が足引っ張った形になっちゃいました」

帰りのタクシーの中で、私はしょんぼりと肩を落としながら隣に座る周防さんに謝った。

企画のコンセプトは間違っていなかった。コピーも褒められてた。駄目だったのは私のコンテだけだ。

クライアントの言う通りだ。自分では差別化して作ったつもりでも、結局どこかで見たような場面の繋ぎ合わせしか出来ていなかった。平凡で目新しさを感じられない絵面。

ああ。私にもっとセンスがあれば、もっとコンセプトの説得力を増すコンテを描けていたら、きっとあんな難色を示されなかったのに。
 
< 9 / 224 >

この作品をシェア

pagetop