オーロラの下、君を想う
「……私、おばあちゃんの影響で旅行が好きになったの」

ルミがポツリと言った。真冬は夜空を見上げるのをやめ、ルミを見つめる。ルミの目はいつものように優しかったが、どこが寂しげだった。

「おばあちゃんは、いろんな国を旅してきた。その話を私によく聞かせてくれたの。私の親は仕事が忙しくて、私はおばあちゃんに育てられたようなものだから……」

ルミの目から涙があふれる。真冬はそれをじっと見つめていた。

「大好きだった。世界で一番大切な人だった。でも、二年前に癌で天国へ行ってしまったの……」

ああ、ルミも大切な人を失った。だから、不思議なくらい心を許せたんだ。真冬はやっと納得する。そして、優しくルミを抱きしめた。

大切な人を失った痛みは、真冬にだってよくわかる。つい最近、経験したのだから……。

「ルミ……。私の話、聞いてくれる?」

真冬も、忘れようとしていた記憶のページをめくった。



真冬は高校を卒業してから、大きな病院に就職した。理由は、看護補助員として働くためだ。

看護補助員は、国家資格を持たないため医療行為はすることができない。患者のオムツ交換や食事の介助などが仕事内容だ。
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