オーロラの下、君を想う
女性は真冬の手を優しく掴むと、「ここは危ないわ。行きましょう」と微笑む。しかし、真冬はその手を振りほどいた。

「……放っておいてください」

女性は首を横に振る。

「放っておけない。あなたを一人になんてさせられない」

真冬の心に、過去の思い出が映る。いつだって真冬は一人だった。学校では友達が作れず、家に帰っても両親は仕事。職場でだって一人を貫いている。会ったばかりなのにそんなことを言う目の前の女性に、真冬は苛立ちを感じた。

「私のこと、何も知らないくせに!!私は一人でも平気よ。いつだって私は一人だった!一匹狼として強く生きてきた!!」

そう、あの時までは一人でも平気だったのだ……。彼と出会ってからーーー。

真冬の目から涙がこぼれる。女性はポケットからハンカチを取り出し、真冬の涙をそっとぬぐう。その目はとても優しい目だった。

「ねえ、知ってる?一匹狼は強く見えるけど、本当はとても弱い存在なのよ」

「……えっ?」
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