【短】センパイ、センパイ、センパイ。
こういう時、心臓ってドキドキ高鳴るものだと思ってたけど、違った。
ドキドキなんてもんじゃない。
ドッカンドッカン、大砲でも打ちまくってるんじゃないかってくらい、暴れ回ってる。
心臓、壊れちゃいそう。
「手紙、受け取れなくてごめん。言葉で伝えてくれて、ありがとう」
心臓と一緒に、涙腺も壊れてしまったみたい。
ボロボロ、ボロボロ。
勝手に涙がこぼれて、窓以上に視界が曇る。
「もう、泣くなって」
「うぅ……っ、だって……ことはセンパイ……っ」
「可愛い顔が台無しだぞ」
「ことはセンパイぃぃ……!」
ことはセンパイは仕方なさそうに、人差し指で涙をすくう。
それでもあふれ続ける大粒に、ことはセンパイの指が冷たく湿ってしまった。
「……ことは、せんぱ……っ、」
ことはセンパイ。
ことはセンパイ。
ことはセンパイ。
何度でも、呼んでいいんだ。
呼んだら、
「ん?」
って、応えてくれる。
なんて愛しい世界なんだろう。
想いが届いただけじゃない。
重なり合った。
今まで感じたことのない気持ちで満ちていく。