【短】センパイ、センパイ、センパイ。





無事に高校生になった。



今では毎日、彼と同じブレザーの制服を着てる。


入学したての頃は、ネクタイを締めることさえドキドキしてた。


彼とおそろいだー、なんて。

生徒は皆同じなのに、バカみたいだね。



6月になり、梅雨の時期に入る頃には、嬉しくて仕方がなかった制服も着慣れてしまった。



なまめかしい雨の匂いで目が覚めて、うとうとしながらネクタイを結ぶ。


ボブの茶髪を整えて、真っ赤なカチューシャを付ける。



いつもどおり、いつもどおり。

何ら変哲のない、フツーの女子高生のできあがり。



初めはこの“いつもどおり”にときめいてたのに、今は正反対。

モヤモヤする。


せっかくの初恋が、揺れ動いたり彩りを変えたりすることもなく、胸の中にポツンとあるのもいつもどおりだから。


想いは一秒ごとに煮えたぎって、この土砂降りの雨に流されてしまいそう。



いつもどおり家を出て、いつもどおり通学路を歩く。


途中で彼に出くわさないか、内心そわそわしてる。
それもいつもどおり。



だけど一度だってすれ違わない。


学校でも、時折遠くに見かける程度。



毎日会えたらいいのになぁ。

そうやって、いつも、願うだけ。




生徒玄関の前で、じっとり重たくなった傘をたたむ。


喉の奥にまだ朝食のパンが残ってるようなもどかしさを振り払うみたいに、傘についた水滴を軽く飛ばした。


湿ったローファーが気持ち悪くて、すぐに内履きに履き替える。


こういうところは、雨はイヤ。

あの文化祭の日が特別なんだ。



「もう雨最悪っ」


廊下を曲がった先から、誰かのため息が聞こえた。


あ、あれって……!


< 4 / 27 >

この作品をシェア

pagetop