拾いものは危険な恋のはじまりでした
・・・side

まだ残暑の暑さが残る午後、その日は取引先との契約がうまくいかず

上司からは怒鳴られ、落ち込んでいた。

人間関係も上手くいかず、仕事もこの調子で退職した方がいいのではと

本気で考える程にまでなっていた。

項垂れながら歩いていると、「落ちましたよ」と澄んだ声が聞こえる

「ハンカチ、落としましたよ」その時君は、優しく微笑みながら僕に

ハンカチを渡してくれたんだ。

何もかもが嫌になっていた僕には、救いの天使が舞い降りたように感じた

不思議なことに、会社に戻ると取引先の契約もこちらの条件のまま決まり

あれほど悩んでいた人間関係も今までが嘘のように上手くいっていた。

単に笑いもしないむすっとした僕に周りもどうしたら良いのか分から

なかっただけだったらしい。

いろんなことが上手く回りだした、これも君のおがげだね。

ある時外回りをしていると、君の姿がみえた。

後をついていくと、繁華街にある小料理屋に入っていく、

「ここで働いていたのか・・」

仕事が終わって小料理屋の暖簾をくぐるが、周りを見渡しても君の姿は

なかった。何度か通いカウンター越しに店の奥が見えた。君は、懸命に

洗い物をしていたね。

店が終わるのを待っていると、店の裏から路地裏を通って帰る君。
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