赤傘
「……ここ、まだあったんだ」
晃の言葉に深く頷いた。
高校生の頃によく行っていたカラオケ店が未だにやっていたからだ。
「あ、でも中も外も綺麗だ。建て替えしたんだね」
「そうみたいだな」
内装は綺麗になったが雰囲気変わらず。
部屋の数も広さも記憶のままだった。
「あの頃はそれなりに古いけど安かったよね」
「だったな。それで学生に人気だったよな」
「そうそう」
入ってみると機械はさすがに新しい。
「なんか昔思い出すよねぇ」
ニコニコと笑う彼に俺は頷き肯定だけした。
こうして変わらねぇモノに囲まれていると、却って変わってしまった己に愕然となる。
俺は隣の彼に気づかれぬよう、小さく溜息をついた。
「………」
またスマホが震えた。妻からだった。
しつこい着信に電源を切ってしまいたい。
だがそんな事をすれば、妻の癇癪が爆発して後で面倒な事になるだろう。
だが電話で話す事もしたくなかった。
先程から送り続けられるメッセージも開きたくない。
晃の言葉に深く頷いた。
高校生の頃によく行っていたカラオケ店が未だにやっていたからだ。
「あ、でも中も外も綺麗だ。建て替えしたんだね」
「そうみたいだな」
内装は綺麗になったが雰囲気変わらず。
部屋の数も広さも記憶のままだった。
「あの頃はそれなりに古いけど安かったよね」
「だったな。それで学生に人気だったよな」
「そうそう」
入ってみると機械はさすがに新しい。
「なんか昔思い出すよねぇ」
ニコニコと笑う彼に俺は頷き肯定だけした。
こうして変わらねぇモノに囲まれていると、却って変わってしまった己に愕然となる。
俺は隣の彼に気づかれぬよう、小さく溜息をついた。
「………」
またスマホが震えた。妻からだった。
しつこい着信に電源を切ってしまいたい。
だがそんな事をすれば、妻の癇癪が爆発して後で面倒な事になるだろう。
だが電話で話す事もしたくなかった。
先程から送り続けられるメッセージも開きたくない。