赤傘
綺麗。綺麗……嗚呼、分かった。
気がついてしまった。

俺は、彼が好きだ。
彼を見ると胸が苦しくて仕方がない。
でも目を離す事が出来ないし離したくない。

うっかりその無防備な横顔に触れてしまいそうになるのを耐えた。

「ん?」

彼がこちらを振り向いた。
視線に気付かれたらしい。
どんな表情をしても不自然がられるのではと視線を逸らす。

「い、いや。なんでもねぇよ」

「そうか?……ほら、次入れなよ。あ、懐かしい」

俺の入れた曲に懐かしい懐かしいと、嬉しそうに口ずさんでいる。

……可愛い。可愛すぎる。
こいつ、こんなに可愛かったか?

確かに俺は妻と上手くいってない。
そもそも結婚したのだって妊娠したと言われて仕方なくだった。

それでも生まれた子はそれなりに愛している。
妻の癇癪や束縛にはうんざりするが、今まで浮気ひとつしたことない。

恋なんてもうしないとばかり思っていたのに……。

それなのに。
俺と言う奴はよりにもよって、親友の男に恋をしてしまうなんて。

「それ、出なくていいのかい?」

また着信か。
彼に指摘されたら無視する訳にもいかない。
小さく舌打ちして手に取る。

たくさんの着信にLINE。画像まで送ってきやがった

……あいつ、何考えやがるんだ!

子供の写真がたくさん添付されている。
メッセージはなし。
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