転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ ～次期皇帝と婚約なんて聞いてません！～

「そう。あなたは勤勉なのね。明日は、私と一緒にお茶を飲みましょう」

「はい、皇妃様」

　ヴィオラに優しく声をかけてくれた皇妃は、初めて会った時と比べて、とても元気になったように見える。

　ラベンダー色のドレスを身に着けた彼女は四十代。年齢にふさわしい、優雅な美しさを持った女性だ。

「そなたはなかなか優秀だと、教師も誉めていたぞ。このまま励むことだな」

「ありがとうございます、陛下」

　いつもより会話が弾まないのは、リヒャルトの父である、オストヴァルト帝国皇帝がこの場にいるからだ。

　満月宮に住むことを許される妃は皇妃だけ。それ以外の妃は、星の名がつけられた建物で生活する。そして、政務を終えた皇帝は、いずれかの妃の宮を訪れて夕食を共にし、そのままそこに泊まるのだ。

　以前の皇帝は、皇妃のところではなく、別の妃の宮に宿泊することが多かった。

　だが、もっとも寵愛していたティアンネ妃を離宮に幽閉してからは、こうやって満月宮に戻ってくることが増えた。今では、週の半分以上を満月宮で過ごしている。

　他の妃達が不満に思わないのか、他人事ながらヴィオラが心配してしまうくらいだ。

　その気になればいくらでも豪華な食事がとれるのだが、今日は客人もいないし、最近少し皇帝のお腹が出てきたというので、今日の食事は客人を招いた時よりヘルシーなメニューだった。

　ヘルシーとはいえ、前菜、スープ、チキンとジャガイモのローストにパン、食後の飲み物と菓子。量も質も十分揃っている。