転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ ～次期皇帝と婚約なんて聞いてません！～

「なに、そなたには借りがあるからな。我が国を救ってもらった。それに、皇妃の願いだからな、そのくらいは……今回は許そうと思ったのだ。それは、それとしてだな」

　皇帝が、ぱんと手を叩く。それを合図にしたように、文官達と侍従は立ち上がってするすると引き下がっていった。

（な、何が始まるの……？）

　一人取り残されたヴィオラは、きょろきょろとしてしまう。どうしてヴィオラを一人取り残すのだろう。

　リヒャルトとの縁談について、皇妃抜きで話をするために呼んだのではなかったのだろうか。だが、もうその話題は終わったわけで、なぜ、今さら皇帝と二人きりにされるのか。

「えっと、あの」

　もごもごとしているヴィオラの前で、皇帝はゆっくりと両手を組み合わせた。真顔で見られ、背筋がひやりと冷え込む。

「そなたに、一つ、聞きたいことがある」

「な、なんでしょう？」

　答える声も、震えている。皇帝から正面切って問われるなんて嫌な予感しかしない。

「そなた――皇妃とは仲がよいな」

「は、はい。可愛がっていただいて……」

「長年よく仕えてくれたアデリナに報いてやりたいのだが、どうすればよいと思う？」

「え？　あ、そ、それは……」

　たぶん、皇帝が言いたいのは、皇妃に報いたいというよりも、皇妃との仲を修復したいということなのかもしれない。どうやら、皇妃が特使を使ったことをとがめるつもりはないというのもそれを踏まえてのことのようだ。