転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ ~次期皇帝と婚約なんて聞いてません!~
 男は懐から取り出したそれが、ぎらりと光るナイフであることに気付き、ヴィオラは両手を口にあてて悲鳴をかみ殺す。ここで騒いで、足を引っ張りたくなかった。

 男はナイフを横に払い、リヒャルトはそれを身軽な動作でかわす。リヒャルトの足が跳ね上がったかと思ったら、男の手からナイフが転がり落ちた。

 蹴り上げられた手を押さえながらも、男はなおも逃走をはかる。

 だが、そこまでだった。

 どこからともなく飛んできた矢が胸に突き刺さり、男はうめき声と共にどさりと倒れる。

「――ヴィオラ!」

 力強い腕に包み込まれたかと思ったら、次の瞬間、視界がぐるりと回る。悲鳴を殺したまま、ヴィオラは自分を抱えてくれているその人にしがみついた。

「ここから動くな、いいな?」

 言葉にならず、ただ首を縦に動かすので精いっぱい。ヴィオラを庇ったリヒャルトは、立ち上がるのと同時に振り返った。

「――矢が飛んできた方を探せ!」

 返事と共に、騎士団員達があちらこちらへと散っていく。続く矢がなかったところを見ると、どうやら、敵は一人だけのようだ。

「……なんで、こいつが殺されるんだよ!」

「タケル様、触れてはいけません」

 タケルが倒れた男に触れようとし、それをタイシンがとめている。

 だって、とか気になる、とか騒ぐタケルに向かい、リヒャルトが付け足した。

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