転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ ~次期皇帝と婚約なんて聞いてません!~
 彼女はなおも深々と頭を下げ、セドリックはその横で不満そうな表情を崩さない。

「父上。私もナイフの紛失には気づいておりました。ですが、その日は、そこにいるミナホ人、ラファエラ妃、ヴィオラ姫と兄上――それに、皇妃陛下の他、何人もの客人を迎えておりました。高価な品でもないし、騒ぎ立てることもないと思ったんです」

 セドリックの話に、一日の間にそんなにたくさんの人をもてなすのは大変だとヴィオラは素直に感心した。

 ジャニス妃が口にした日は、たしかにヴィオラもジャニス妃のところを訪れていた。一度訪問するようセドリックから頼まれていたからだ。

 あの日、たいして実りある話ができたとも思わないけれど、まさか、あのあとそんなことになっていたとは。

「今後は、きちんと報告せよ。ヤエコ殿、それでよいな? ミナホ人居住区は、重点的に警備の者を回す様にしよう」

「お心遣いに、感謝する」

 ヤエコがそう言って、その場はお開きになったけれど、ヴィオラはなんだかもやもやしていた。

(そう言えば、あの日、タイシンがラファエラ妃の宮に行くのを見たんだけど、あれは勘違いだったのかしら)

 そこにいるミナホ人とヤエコ、タケル、タイシンのことをセドリックはまとめていたけれど、あの時ヤエコはこの国にいなかった。タケルは夕方まで勉強していたはず。

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