転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ ～次期皇帝と婚約なんて聞いてません！～

「ごめんなさい、ラファエラ妃殿下。私……そういうの、難しくて」

　両頬に手を当て、ヴィオラは困惑したように首を振った。必殺、子供のふり作戦である。

「しっかりしていると思ったが、まだまだ子供だな。では――皇妃とヤエコが会うことがあれば、私に教えてくれればいい」

「それでどうするんですか？」

　無邪気な子供の顔を装って、ヴィオラは問いかける。

「なに、そこはそなたの気にすることではない。そうしてくれたら、そこの侍女にも礼をやろう」

「……わかりました」

　ラファエラ妃がヴィオラを呼び出した本音はこちらにあったようだ。話を終えて宮を出たヴィオラはぐったりとしてしまった。

　こういう話は、頭が痛くなる。

（リヒャルト様に伝えたほうがいいよね。あとは……ヤエコ様は忙しいから、タケル様かタイシンに話すべき？）

　歩きながら目を上げると、ふと、この場にはそぐわないものが目に飛び込んできた。

　すれ違った使用人の髪を飾るのは、桜の花を模った髪飾り。

　それは、ヴィオラがヤエコからもらったものによく似ていたけれど、ヴィオラのもらった品が銀製なのに対し、木か竹で作られているようだ。精緻な細工ではあるが、そんなに高価な品ではなさそうだ。