転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ ~次期皇帝と婚約なんて聞いてません!~
「我が国では、新年を祝う行事の時に使うものなんだ。アデリナとは、ウルミナ王国の言葉で話していたし、これを読める者がこちらの国にいるとは思わなかったよ」
「皇妃様とは、お友達だったんですよね」
「そう。私の父は、王族であるのと同時に、世界を回る商人だった。ウルミナ王国に滞在したのは、合わせて二年くらいだったかな。ウルミナ王国を拠点に、こちらの大陸のあちこちを歩き回っていたから……待っている間、他にも読める句があるかどうか見てごらん。さて、何にしようかね」
くるりと向き直ったヤエコは、今度は鏡台の引き出しを上から順番に開け始めた。ご褒美は必要ないともう一度言ったけれど、ヤエコの耳には届いていないようだ。
「そうだ、この髪飾りにしよう。銀の髪飾りだよ。若い娘にはこのくらい華やかな方がいい――こちらの国でも、髪は結うんだろう?」
「あ、は、はい……」
差し出されたのは、櫛型の簪――髪飾り――だった。銀の繊細な細工が施されている。彫り込まれた美しい花の彫刻にヴィオラの目が吸い寄せられる。
(この花は……桜?)
渡された髪飾りを手に取り、ヴィオラはまじまじとそれを見つめた。
「綺麗な花だろう。こちらでは見かけないかな――桜というんだ。私が若い頃使っていたものだけれど、気に入らないかい?」
「い、いえ、とても嬉しいです! ありがとうございます、ヤエコ様」
思った通り、髪飾りに彫り込まれていたのは桜だった。きっと、職人が丹精込めて彫ったのだろう。
「このお花は、見たことがないんですけど、とても綺麗だと思います」
ヤエコの厚意が嬉しくて、髪飾りを大事に両手で包み込む。
「皇妃様とは、お友達だったんですよね」
「そう。私の父は、王族であるのと同時に、世界を回る商人だった。ウルミナ王国に滞在したのは、合わせて二年くらいだったかな。ウルミナ王国を拠点に、こちらの大陸のあちこちを歩き回っていたから……待っている間、他にも読める句があるかどうか見てごらん。さて、何にしようかね」
くるりと向き直ったヤエコは、今度は鏡台の引き出しを上から順番に開け始めた。ご褒美は必要ないともう一度言ったけれど、ヤエコの耳には届いていないようだ。
「そうだ、この髪飾りにしよう。銀の髪飾りだよ。若い娘にはこのくらい華やかな方がいい――こちらの国でも、髪は結うんだろう?」
「あ、は、はい……」
差し出されたのは、櫛型の簪――髪飾り――だった。銀の繊細な細工が施されている。彫り込まれた美しい花の彫刻にヴィオラの目が吸い寄せられる。
(この花は……桜?)
渡された髪飾りを手に取り、ヴィオラはまじまじとそれを見つめた。
「綺麗な花だろう。こちらでは見かけないかな――桜というんだ。私が若い頃使っていたものだけれど、気に入らないかい?」
「い、いえ、とても嬉しいです! ありがとうございます、ヤエコ様」
思った通り、髪飾りに彫り込まれていたのは桜だった。きっと、職人が丹精込めて彫ったのだろう。
「このお花は、見たことがないんですけど、とても綺麗だと思います」
ヤエコの厚意が嬉しくて、髪飾りを大事に両手で包み込む。