転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ ~次期皇帝と婚約なんて聞いてません!~
 病気の予防のために上下水道を整備する。その過程で、ため池を作ったり、河川の流れを変えたりもした。予防だけではなく、流行り病の治療法を全国に広める。

 識字率が高いとはいえなかったミナホ国の人々のために、全国民が基本的な読み書きと算数を学べるように教育制度を整えた。

 農業の発展、病気の予防、治療――そして、国民に教育を与えた。彼の残した功績は、五百年たった今も伝えられていて、ミナホ国の人間は、皆勤勉なのだという。

 だから、デンジロウは他の世界から招かれた『稀人』であり、『神の御使い』であるのだとヤエコは教えてくれた。貧しいミナホ国の人達を救うために、デンジロウは神が遣わした存在だと信じられているのだそうだ。

「神に救われた国でも内乱がおこるのだから、人間というのはしかたのないものだね」

 苦笑したヤエコは、ヴィオラに一冊の本を差し出した。

「ほら、これがデンジロウの残した書籍だよ。日記――と言えばいいのかな」

「こんな貴重なもの、私に見せてしまっていいんですか?」

「これは写しだからかまわないさ。それに、先ほどの歌に涙を見せたヴィオラなら、わかることもあるんじゃないか――?」

 ヤエコは、ヴィオラに何を期待しているのだろう。だが、ヴィオラは受け取った本を開き、そこに記されている文字を読み解こうとした。
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