転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ ~次期皇帝と婚約なんて聞いてません!~
「見たこともない字がいっぱいあります」

(日本語だけど……こんな難しい字は、私は使わない。こっちの言葉は英語、それからもう一つは……何語だろう、わからないな。扇に書いてあるのと同じ言葉だと思うんだけど)

 たぶん、難しい字というのは旧字体だ。なんとなくはわかるけれど、ヴィオラには難しい。

英語も、わからない単語だらけだ。もう一つの言葉にいたっては、何語かさえも不明。

 ところどころローマ字で書かれたページもある。もちろん、これを写本した人が正確に写していればということであるが、意味は読み取れる。

 これを見れば、ミナホ国の初代国王であるデンジロウが、ヴィオラと同じく日本から来たというのはほぼ、間違いのないところだろう。

 だが、根本的にひとつ違うところがある。

(デンジロウさんって、昔の人なんじゃないかな……)

 ヤエコにどう対応すべきか考えながら、ひたすらページをめくり続けた。

なんとか読める範囲だけでも、日本への望郷の念、助けてくれた周囲の人達への感謝、貧しい生活をしている周囲の人達を助けたいという願い――この世界に放り出された"デンジロウ"の苦悩が伝わってくる。

「……ごめんなさい、ヤエコ様。これは難しくて読めません」

 本を閉じ、ヤエコに返す。
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