転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ ～次期皇帝と婚約なんて聞いてません！～

　夕食の下ごしらえをしていた他の料理人達も手を止め、興味津々な様子でこちらに近づいてきた。

「ヴィオラ様、これはとても贅沢な品なのでは……」

　料理人の一人が、こわごわと口にする。貴重な香辛料が使われているのを、香りだけで気づいたらしい。

「そうなの。香辛料が二十種類くらい入っているんですって。庶民には手が出ないわよね。ミナホ王国でも、特別なお祝いの時でもないとめったに食べられないって昨日教えてもらったわ」

　出来上がったカレーフィリングは、平たいバットに広げて冷ましておく。その間に、アラムの捏ねてくれたパン生地の一次発酵が終わった。

　パン生地を等分に分け、丸めてしばし寝かせる。

　寝かせ終わったパン生地にカレーフィリングを包み込み、二次発酵。発酵が終わるのを待つ間に、残ったフィリングは、料理人達が一口ずつ味見していた。

「これは、ピリッとするな」

「香りはいいが……俺には刺激が強すぎるな」

「スパイスの配合を変えてはどうだ？」

　ひと匙ずつすくったそれを舌の上で転がし、味わい、複雑なスパイスの配合を確かめる。