転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ ～次期皇帝と婚約なんて聞いてません！～

「んー、となると牛肉かな。ローストにするか、ドライトマトと煮込むか」

「私はローストビーフがいいと思う。あのね、ヤエコ様のところでお食事をいただいた時に、ローストビーフも出てきたの。だから、きっとお好きだと思う。あとは、そうね……」

「サーモンとほうれん草のグラタンはいかがでしょう？　タケル様は、チーズがお好きではありませんでしたか」

「あ、そうだったかも。ニイファはよく覚えてるのね！」

　昼食会の魚料理はサーモンとほうれん草のグラタンに決めた。

魚を食べる文化があまり発達していないため、この国ではコースのメインとして肉料理はかならず出されるが、もう一品は魚料理、もしくは卵を使った料理になる。そして、卵を使った料理の方がより好まれているようだ。

　タケルがチーズを好むというのであれば、チーズたっぷりのグラタンは気に入ってくれるだろう。サーモンとほうれん草のグラタンは、リゾルデ豊穣祭の準備をしている時に、満月宮で働く使用人達にもふるまって好評だった。

「デザートはどうしようかな……グラタンにチーズを使うから、チーズケーキ以外がいいわよね……あら？」

　アラムが顔見知りの店員と話を始めたので、ヴィオラは足を止めて彼を待つことにした。

　アラムは皇宮を追われていた頃、この市場で働いていたことがある。だから、市場の人達とも仲がよく、お得な食材や珍しい食材の入荷などを教えてもらっているのだ。