転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ ~次期皇帝と婚約なんて聞いてません!~
「マドレーヌもおいしい」

 表面はさくっとしていて、中はふんわりとしている。甘みは強いが、レモンの香りのおかげでくどさは感じられない。

「アラムがヴィオラ様のために焼いてくれたんですよ」

「本当に? アラムが戻ってきてくれてよかった。こんなにおいしいお菓子が焼けるのに解雇するなんて大問題だわ」

 アラムもまた、ティアンネ妃の起こした事件の被害者といえるかもしれない。毒キノコを皇宮の晩餐会に供したとされた彼は、クビになって皇宮から追い出された。

 ヴィオラとリヒャルトが彼の無実を証明したおかげで、彼は、再び皇宮の厨房で腕を振るうようになったのである。

「たしかにそうですね。そうそう、今日の夕食は、チキンとジャガイモのローストだそうですよ」

「それも楽しみね。今日は、皇妃様のところで一緒にいただくのでしょう?」

「その予定です」

 満月宮の客人であるヴィオラは、皇帝一家と食事をすることもしばしばだ。皇帝と会話をかわすわずかな機会は、大半がその場に限られていた。

「それなら、明日の予習を先にすませてしまうわ。あとは、夕食用のドレスを出しておいてくれる?」

「かしこまりました」

(ニイファが一緒に来てくれてよかった)

 頭を下げるニイファを見ながら、しみじみと思う。
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