『またね。』
「いいよ。一緒につけよう。」
僕は鈴の持っていたネックレスをひょいと預かってもう一度レジに向かう。
「待って待って、私も払う!」
慌てて鈴が僕の隣に立ってお金を出す。
「いいのに。」
「ダメ!半分は絶対出すからね?」
仕方なく僕はあと半分を出して会計を済ませる。
売店の外に出て鈴が箱を開ける。
「…見てみて!可愛い!」
「くらげ好きだもんね。」
「うん!」
鈴が首に付けたくらげがキラキラしてる。
「輝付けないの?」
…今?!
「私が付ける!屈んで!」
鈴がもうひとつを取り出して僕の首に腕を回す。
長袖のカーディガンの袖から見える真っ白な細い腕。
僕の半袖のシャツから出た少し日焼けした腕。
…もう少し待ってね、鈴。
絵が完成したら、僕の心臓をあげるから。
【卯月輝side END】

【佐倉鈴side】
輝が私にくれたお土産。
可愛いイルカのストラップとペンギンのぬいぐるみ。
ぬいぐるみも丁度いい大きさで可愛いの。
私も輝に買ったお土産を渡す。
「え、これ僕に?」
「うん、今日連れてってくれたお礼。」
私が買ったのは…輝が買ってくれたみたいに立派なものじゃないけど…
シャチの水槽で幸せそうな顔をしていた輝を見てシャチが好きなんだってことがわかって。
そこから売店でシャチのストラップを買って。
お金があまりないから本当は買いたかったシャチのぬいぐるみを諦めて…
「シャチ…」
袋から取り出してシャチのストラップを早速携帯に付けている輝。
…シャチ好きなんだ…
「シャチ好きなの?」
「うん。」
ストラップを見てホクホクしている輝。
…輝は私に沢山嬉しいことをしてくれるのに私は全く出来ない…
私だって輝のために、なにかしたいよ…
「鈴」
「なに?」
「ありがとう。
鈴が買ってくれたことがうれしいよ。
僕の宝物にする。」
…そんなに良いものでもないのに…
輝は私を家まで送ってくれた。
私が、家に入るのを見届けてから輝は元来た道を引き返していく。
わざわざいつも送り迎えしてくれる輝。
「あ、鈴おかえり。」
「ただいま。お母さんごめん、今日学校休んだ…」
「いいよ、お友達と遊んでたんでしょ?」
「え?」
なんでお母さんが知って…
「そのお友達から連絡が来たのよ。」
「えぇ?!」
輝が?!
「1日、学校を休ませてしまってすみません。って電話で言われた時は怒る気もなくなっちゃった。」
…お母さんが心配しないように連絡してくれていたんだ。
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