『またね。』
「それで、あの男の子はボーイフレンド?」
「…ううん、でも好き。」
…好き、だけど…
もうすぐ死んじゃう私にそんな事言われても輝はきっと困るだけだよね…
「鈴、喜んで。
ドナーが見つかったの。
でもその人の都合であと1ヶ月待って欲しいって。」
…1ヶ月…
1ヶ月我慢したら輝とずっと一緒にいられる…
「1ヶ月、耐えられる?」
「うん!」
やっと、この苦しみから開放されるんだ…
嬉しすぎる…
私は部屋に行って、部屋着に着替える。
制服をハンガーにかけて携帯を取り出す。
ペンギンのぬいぐるみを抱きながら輝の電話番号を見つめる。
…まだ、自転車漕いでるかな…
輝は私を家まで送り届けてくれるけど私は輝のこと、何も知らない。
…電話、掛けてもいいかな…
ううん、先にメッセージにしておこう。
『鈴です!
今日はありがとう!』
本当に楽しかったことも表現したいんだけど、文章じゃどうしても出来ない…
『輝です。
僕も楽しかったよ、またいつか、行こうね。』
…メッセージが返ってきた…
家に着いたのかな…?
『輝、電話してもいい?』
『うん。今着いたから。』
横になっていた私は飛び起きて発信ボタンを押す。
コール音が2回で輝は電話に出てくれた。
『もしもし。』
「輝!私だよ!」
『知ってるよ。』
電話の向こうでガチャッと鍵が開く音がする。
『今日、勝手に連れ回してごめんね。』
「ううん!いいの、お母さんに連絡してくれたんだね、ありがとう輝。」
輝に連れ出してもらえるし、ドナーが見つかったし、今日は最高だよ!
「あのね、輝。」
『うん?』
ドサッと荷物を置く音が聞こえる。
「心臓のドナーが見つかったの!」
『…良かったね。
じゃあ、もうすぐ元気になるんだ。』
「そうだよ。だから、その時はあの約束、果たしてくれる?」
『…』
輝が言葉に詰まるのがわかる。
「…輝?」
『…果たしたいよ。僕は。』
手術が終わったら私は1番に輝に想いを伝える。
輝が大好き。
辛い時も。
寂しい時も。
いつもそばにいてくれた優しい輝。
「あのね、手術が終わったら、今度はお化け屋敷入りたいの。」
『…うん。』
「それとね、大きなジェットコースター…
今日、輝が止めたの、全部乗りたい。」
…全部、輝と一緒にしたいの。
『…そうだね。今度は乗れるよ。』
…なんで?
なんで輝は約束してくれないの?
『今度は好きな人と一緒に行かなきゃ。』
「…うん、だから…行こうよお…」
輝とじゃなきゃ行かないよ…
私は輝がいいの…
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