『またね。』
お墓の次は輝のお母さんの所。
渉さんて人と結婚したんだって。
でも子供はいなくてずっと2人でのんびりしてるんだって
…車でお墓から15分。
1軒のお家についた。
ー…ピンポーン…
静かなチャイムがなる。
「はーい。」
家の中を少し急ぎ足で歩いている女性。
ーガチャ。
「…あら、もしかして鈴ちゃん?」
出てきたのは輝のお母さん。
「ご無沙汰してます、磯ヶ谷鈴です。」
「上がって上がって〜」
輝のお母さんの梨華さんは可愛らしくてお上品な人だ。
「どうぞ〜」
「ありがとうございます。
あの、どこか出かけられるところでした?」
梨華さんは小綺麗な服を着て、髪も丁寧にまとめていた。
…悪い時に来ちゃったかな…?
「ううん、どこにも出かけないよ。
輝の命日だから、気分的にね…」
梨華さんは仏間を見る。
「…良かったら手、合わせてく?」
「ぜひ、合わさせてください…」
私たち家族が最も敬意を払う人。
輝…
仏壇の前に正座する。
輝のお父さんの隣に輝の遺影。
遺骨もある。
…ここにいたんだね、輝…
遺影の中の輝はまだ高校生で。
…高校生には見えないほど大人っぽくて優しい顔をしていた。
…この遺影の写真、もしかして…
「ふふっ気づいた?」
「…っ…」
「この遺影の写真は、鈴ちゃんとデートしに行った時の写真です。」
…私と、一緒に撮った時の…
「…輝っ…」
…また、泣いちゃった。
私、泣き虫だ…
「…好きな人のために命を投げ出すなんて…
最初聞いた時は本当に驚いたけど、最後は賛成したわ。」
「…どうして…」
梨華さんは涙目になっている目を閉じて笑う。
「…仕方ないじゃない?
そう育てた覚えはないのだけれど。
…和樹…輝の父がそういう人だったからね…」
…親子揃って同じような性格だったんだね。
「……輝っ…」
梨華さんは私を優しく抱きしめてくれる。
「鈴ちゃん、輝はずっと、鈴ちゃんの中に生きてるから…」
「…はいっ…」
「…鈴ちゃんはちゃんと家族を大切にしてあげて。
…私は、大切に出来なかったから…」
…そんなこと、無い。
「輝はちゃんと、梨華さんのこと、愛してました!」
笑顔で私にお母さんのことを話していた輝。
一緒にいた時間は短いけど、分かるよ。
輝がどれだけお母さんのことを大切にしていたか。
「いつも、幸せそうにお母さんとあったことを話していました。」
目じりをクシャクシャにして無邪気な子供みたいな笑顔で。
「…うん、ありがとう鈴ちゃん…」
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