『またね。』
私の弱音も嫌な顔せず全部聞いてくれる。
「病院ももうやだ。」
「うん。」
「点滴も、もうやだ。」
「うん。」
「外で思いっきり走り回りたい。」
「うん。」
優しい笑顔で聞いてくれている卯月くん…
安心して話しているからなのか、私の目からは涙が溢れだしていた。
「…治ったら、走り回ろう。
一緒に。」
…希望、持ってもいいのかな?
私が、治らないと思うんじゃなくて、希望持って、待っていてもいいのかな?
間に合うのかな…?
「卯月くん、私怖いよ。」
「何が?」
「ドナーの人の心臓を奪ってしまうのが。」
「でも奪ってしまわないと治らないよ。」
優しい目をして、私が握っている自分の手を見つめる卯月くん…
…卯月くんと一緒なら。
「…約束、してくれるの?」
「ん?」
「治ったら、私と一緒に走ってくれる?」
「…走ろう。」
卯月くんの優しい笑顔。
…信じてもいいんだ。
【佐倉鈴side END】

【卯月輝side】
…佐倉さんのために自分が出来ること…
ある。
ドナーが…いないなら、探せばいい。
最悪、僕の心臓が合えば僕の心臓を与えたらいい。
僕には悲しむ親も、友達も全く居ないから。
…病院に行って適合するか、検査してみよう。
それで合えば、僕の心臓を、佐倉さんへ…
「大丈夫だよ。きっと…」
僕が、着いてるから…
ー…
目の前にある大きな病院。
佐倉さんが入院している病院だ。
「…よし、行こう。」
僕は今日、佐倉さんの体と適合するのか、検査に来ていた。
正直手術とか怖いけど、佐倉さんを救えるならなんだってやれる。
「卯月輝さん。」
「…はい。」
呼ばれて中に入る。
白衣を羽織ったお医者さんと目を合わせる。
「…検査の結果、すずちゃんの体と適合することが判明しました。」
…適合…
良かった。
でも、今すぐにはできない。
僕が絵を描きあげるまで待って欲しい…
「今すぐには…出来ないので、待ってください。
佐倉さんにもまだ伝えないでください…」
まだ、ダメなんだ。
僕が描き終わるまでは…
「じゃあ、もう、いいってなったらまた来てくれるかな?」
「はい…」
「鈴ちゃんの体はもう限界なんだ。
だから、壊れてしまう前に来てくれ。」
「分かりました。」

…良かった。
僕の心臓が佐倉さんに合って…
「…これで、いいよね。
父さん。」
病気が原因で死んでしまった父さん。
僕は今、アルバイトをしながら生活している。
父さんが遺してくれたお金にはなるべく手を付けない。
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