『またね。』
やだなあ…
輝のこと、思い出すだけで涙が出てきちゃうよ。
「泣きたいだけ、泣けばいい。」
磯ヶ谷くんは私を優しく包んでくれる。
…輝より筋肉質で硬い胸。
それなのに、なんだか落ち着く。
「…っ…」
「声、押し殺さなくてもいいよ。」
「…うっ…」
磯ヶ谷くんは私の背中をポンポン優しく叩いてくれる。
…輝っ…
今すぐ会いたい。
会って、抱きしめて欲しい。
「…卯月が羨ましいよ。」
「え?」
「だって、こんなに鈴ちゃんに想われているんだもん」
輝は磯ヶ谷くんが羨ましいって言ってた。
…輝が生きていたら。
きっとこの2人は仲良くなっていたかもしれない。
「…だから、卯月に会ったらとりあえずビンタしたい。」
「…ふふっ…」
「ビンタしてそこから友達になりたい。」
…きっと、輝も同じだと思うよ。
出会い方が違えばきっと、そうなってたよ。
「…鈴ちゃん、まだ卯月のこと、好きなんだろ?」
…好き。
……だった。
いつかそう思えるようになるかな?
「…うん、まだ好き。」
付き合ってた頃よりもっと。
片想いの方が辛いよお…
もう、伝える相手すら居ないんだもん…
私の心はまだ輝にある。
「…うん。」
磯ヶ谷くんを好きになれるように。
変わっていくから…
【佐倉鈴side END】

【磯ヶ谷武瑠side】
日曜日。
俺は駅前で人を待っていた。
「磯ヶ谷くん!お待たせ!」
鈴ちゃん。
今日は初めてのデート。
鈴ちゃんの心を楽しさで埋めるために遊園地に来ている。
「…ここ。」
「ん?」
「輝と学校休んで来たところだ。
…手術の前に楽しいことで埋めようって言って…」
…卯月と同じ考えなのかよ。
「…今日はめいいっぱい楽しんでよ。」
「うん!前来た時は輝が私の体を心配して絶叫系乗れなかったからね!」
鈴ちゃんが心臓病持ってたことは知らなかった。
多分知ってたのは先生と卯月。
ほかの人たちは誰一人知らなかった。
卯月が死んだ後に鈴ちゃんがみんなに話して周知の事実になってるけど…
鈴ちゃんを助けるために自分殺すとか馬鹿なんじゃないのか卯月…
鈴ちゃんとの未来は考えてなかったのかよ…
もし、卯月が生きていたら…
俺は鈴ちゃんと仲良くなるのをちゃんと祝福出来たのだろうか…
…祝福せざるを得ないよな…
卯月と付き合ってた頃の幸せそうな鈴ちゃんを見てたから…
「今日は何乗る?」
「やっぱ絶叫系かなー」
鈴ちゃんは目をキラキラさせて色んな乗り物を見る。
「私何気に人生で2回目の遊園地だから、しっかりエスコートしてね王子様」
鈴ちゃんは笑いながら手を差し出す。
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