『またね。』
まあ、ここのお化け屋敷、本当に怖いからねえ…
「…大丈夫だよ、ここにいるよ。」
鈴ちゃんの手を握る。
俺は出口を目指して歩く。
手は繋いでいるけど怖いのか、しっかり俺にしがみついている。
…歩きにくいんだけど…
「もうすぐ出口だよ、頑張れ。」
出口の光が見えてくると鈴ちゃんは少しホッとしたのかしがみついている腕の力を抜く。
「…うぅ…」
鈴ちゃんは外に出ると涙目で俺を見る。
「こんなに怖いなんて聞いてない!」
ヘナヘナ〜って崩れ落ちる鈴ちゃん。
鈴ちゃんを支えて端の方に移動する。
「…だから輝、私をここに入れなかったのかあ…
怖いの知ってたから…」
…卯月のことを考えている鈴ちゃん…
利用してもいいって言ったけど…
流石に虚しいや…
「…磯ヶ谷くん」
「ん?」
「楽しいよ。」
鈴ちゃんはにっこり笑って俺の手を握る。
そしてもう一度ジェットコースターの方へ走る。
…ジェットコースター…
……もう勘弁してください…
【磯ヶ谷武瑠side END】

【佐倉鈴side】
私が楽しめるように磯ヶ谷くんが計画してくれた今日のデート。
全力で楽しまなきゃ勿体ないよね!
って思ってたんだけど…
全力で楽しみすぎちゃった…
トータル13回ジェットコースターに乗った私と磯ヶ谷くん。
…磯ヶ谷くん、高所恐怖症だなんて知らなかった。
……悪いことしたなあ…
「高所恐怖症なのに観覧車はいいの?」
「うん。ゆっくり動くのはいいの。」
…変わってるなあ…
高所恐怖症なら、ゆっくりの方が怖い気がするけど…
「ねえ、鈴ちゃん。」
「ん?」
「俺、鈴ちゃんに好きになってもらえる見込みある?」
……
…正直、答えられなくて…
私が輝のこと好きなのを止められなくて…
「…まだ、卯月のこと好き?」
「…」
私は静かに首を縦に振る。
「…意地悪な質問しちゃったね。
俺のことは、好きになってくれる?」
…好きに、なりたいとは思ってる…
こんなに私のことを考えてくれて、こんなに尽くしてくれる磯ヶ谷くんのこと。
輝への気持ちを無くして磯ヶ谷くんの想いに答えたい。
「…まだ、分からないの。」
私はまだ輝が好き。
その気持ちはまだ揺らがない。
輝が好きで好きで仕方ないの。
…どうしたらこの想いを忘れられる…?
私、忘れられる自信ない。
「…自分の気持ちも。」
…ハッキリしなさすぎて分からない。
私は…まだ輝が好き。
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