『またね。』
「…佐倉さん…」
教えてくれたメールアドレスと電話番号。
登録はしたけど、連絡はまだしたことない。
『佐倉さん』
電話の発信ボタンがどうしても押せない。
約束を破ることになるから…
一緒に…走りたかったな…
きっと早いんだろうな。
僕は携帯を締まってご飯を作る。
アルバイトで残ったご飯や、おかずをアレンジしてるだけだから作る、とは言わないけど…
夕方は週4でコンビニ。
朝は早起きして毎朝新聞配達。
正直朝は弱いけれど、仕方がない。
僕が稼ぐにはこうするしかない。
母は生きているらしいけど、あったことがないから分からない。
見たことの無い僕の母さん。
どんな人なんだろう。
僕のことを知っているのだろうか。
…名前は“梨華さん”
父さんが酔っ払った時によく呟いていたから知っている。
僕の母さん。
…今、どこで何をしているんだろう。
「…」
今日も1人、アパートの一室で黙ってご飯を食べる。
話す相手もいないし、静かだ。
父さんの写真を見ながら箸を進める。
「…寂しいな…」
僕は…いつも独りだ。
「…」
佐倉さんが一緒なら…
どれだけ楽しく食べれるだろう…
ぼんやり、そんなことを考えながら僕はご飯を下げた。
「…今頃、何してるのかな…」
僕には関係ない。
彼女が今、何をしているのかなんて。
僕には関係ないはずなのに、考えてしまう。
僕は…
彼女のこと、好きなの、か?
自分でもよくわからない。
ただ、彼女のことはきになる。
愛くるしい顔立ち。
綺麗な茶色の髪。
身も心も綺麗な彼女に惹かれているのは確かだ。
…だから、僕は描こうと思えたんだ。
とびきり笑顔、ではなく、柔らかく微笑んだ彼女の笑顔をキャンバスに。
「…佐倉鈴、さん…」
僕の希望の光。
きっと輝かせてみせる。
【卯月輝side END】
【佐倉鈴side】
次の日。
私はそこそこ早い時間に学校に来た。
卯月くんの絵を描く姿が見たい。
考えれば考えるほど気になってしまう。
ウキウキしながら美術室の扉を開くと既に卯月くんは絵を描いていた。
「あ、おはよう佐倉さん。」
「おはよう、卯月くん。」
「今日は走らず来たんだね。」
ニコッと笑って卯月くんは筆を走らせる。
心做しか、急いで描こうとしているように見える。
「…卯月くん。」
「何?」
「名前、で呼んでもいい?」
卯月くんは少し驚いた顔をする。
「僕の?」
「うん。」
「いいよ。」
少し考えてから卯月くんは私を見て微笑む。
筆は止まらず、私の話を聴きながら微笑む。
教えてくれたメールアドレスと電話番号。
登録はしたけど、連絡はまだしたことない。
『佐倉さん』
電話の発信ボタンがどうしても押せない。
約束を破ることになるから…
一緒に…走りたかったな…
きっと早いんだろうな。
僕は携帯を締まってご飯を作る。
アルバイトで残ったご飯や、おかずをアレンジしてるだけだから作る、とは言わないけど…
夕方は週4でコンビニ。
朝は早起きして毎朝新聞配達。
正直朝は弱いけれど、仕方がない。
僕が稼ぐにはこうするしかない。
母は生きているらしいけど、あったことがないから分からない。
見たことの無い僕の母さん。
どんな人なんだろう。
僕のことを知っているのだろうか。
…名前は“梨華さん”
父さんが酔っ払った時によく呟いていたから知っている。
僕の母さん。
…今、どこで何をしているんだろう。
「…」
今日も1人、アパートの一室で黙ってご飯を食べる。
話す相手もいないし、静かだ。
父さんの写真を見ながら箸を進める。
「…寂しいな…」
僕は…いつも独りだ。
「…」
佐倉さんが一緒なら…
どれだけ楽しく食べれるだろう…
ぼんやり、そんなことを考えながら僕はご飯を下げた。
「…今頃、何してるのかな…」
僕には関係ない。
彼女が今、何をしているのかなんて。
僕には関係ないはずなのに、考えてしまう。
僕は…
彼女のこと、好きなの、か?
自分でもよくわからない。
ただ、彼女のことはきになる。
愛くるしい顔立ち。
綺麗な茶色の髪。
身も心も綺麗な彼女に惹かれているのは確かだ。
…だから、僕は描こうと思えたんだ。
とびきり笑顔、ではなく、柔らかく微笑んだ彼女の笑顔をキャンバスに。
「…佐倉鈴、さん…」
僕の希望の光。
きっと輝かせてみせる。
【卯月輝side END】
【佐倉鈴side】
次の日。
私はそこそこ早い時間に学校に来た。
卯月くんの絵を描く姿が見たい。
考えれば考えるほど気になってしまう。
ウキウキしながら美術室の扉を開くと既に卯月くんは絵を描いていた。
「あ、おはよう佐倉さん。」
「おはよう、卯月くん。」
「今日は走らず来たんだね。」
ニコッと笑って卯月くんは筆を走らせる。
心做しか、急いで描こうとしているように見える。
「…卯月くん。」
「何?」
「名前、で呼んでもいい?」
卯月くんは少し驚いた顔をする。
「僕の?」
「うん。」
「いいよ。」
少し考えてから卯月くんは私を見て微笑む。
筆は止まらず、私の話を聴きながら微笑む。