『またね。』
「…輝、くん…」
「ん?」
「…輝くん。」
「くん、はなくてもいいよ。
ね、鈴ちゃん。」
え、名前…
「ん?ダメだった?」
「ちゃん、なくてもいいよ…」
輝…
…優しい輝…
私の…生きる糧…
「…じゃあ、…鈴」
「うん。」
輝…
私、輝の絵を見た時からずっと惹かれてたの。
男か女かも分からないのにおかしいよね。
私の中で、あの絵を描いた人は男のひとっていうイメージが着いていたんだ。
「…輝…」
「ん?」
シャカシャカ鉛筆と筆を走らせながら視線を軽くこちらに向けてきてくれる輝。
優しい輝。
そんな彼が…本当の独りぼっちだとはこの時の私は知る由もなかった。
だって私は私の事でいっぱいだったから…
【佐倉鈴side END】
【卯月輝side】
…鈴と仲良くなって2日。
僕はいつもの様に屋上に呼び出されていた。
絵を描いている時は僕だって強気なのに…
人との関わりになるとどうしても弱くなってしまう。
僕は…臆病だ…
「おい、最近朝いねえけど、どこで何してんだ?」
「…い、家を…出る時間…遅くしたので…」
…気づかれてはいけない。
僕にとって唯一和むあの空間を邪魔されたくない。
鈴の命はあと少しなんだ。
せめて、その少しの間に絵を描かせて欲しい。
僕は他に何もいらないから…
鈴のために、早く絵を仕上げたいんだよ…
「…そうかそうか。だったらいつもみたいに早く教室来いよ。」
「なんで…」
「こうやってストレス発散するためだよ!!」
磯ヶ谷くん…
イケてる系の男達のリーダーが僕に殴り掛かる。
…鈴なら…
前みたいに避けるんだろうな…
僕にはそんな運動神経なんてない。
だから、当たるしかないんだ。
ードゴッ!
…ほら。
僕はノロマで鈍臭いから。
当たるしかないんだ。
しばらく殴って気が済んだのか、彼らは屋上から出て行った。
「…って…」
どんだけ殴るんだよ…身体中痛てぇ…
フラフラする体を何とか踏ん張って立ち上がる。
早く…鈴のいるところまで行かないと…
トイレって言って出てきたきりなんだから…
ーガラッ…
「え、輝どうしたの?!」
…あ、怪我してたんだ…
鈴の顔を見て安心した僕はその場に座り込む。
「何?また磯ヶ谷くん達に?」
…ここで頷けば鈴は怒り狂ってしまう。
「転んじゃって」
「そんなわけないでしょう。」
…やっぱりすぐバレるよねえ…
僕って嘘下手だなあ…
「とりあえず手当しなきゃ。」
鈴の冷たい手が僕の腕を掴む。
…鈴は日に日に弱々しくなっている。
早く仕上げないと…
「ん?」
「…輝くん。」
「くん、はなくてもいいよ。
ね、鈴ちゃん。」
え、名前…
「ん?ダメだった?」
「ちゃん、なくてもいいよ…」
輝…
…優しい輝…
私の…生きる糧…
「…じゃあ、…鈴」
「うん。」
輝…
私、輝の絵を見た時からずっと惹かれてたの。
男か女かも分からないのにおかしいよね。
私の中で、あの絵を描いた人は男のひとっていうイメージが着いていたんだ。
「…輝…」
「ん?」
シャカシャカ鉛筆と筆を走らせながら視線を軽くこちらに向けてきてくれる輝。
優しい輝。
そんな彼が…本当の独りぼっちだとはこの時の私は知る由もなかった。
だって私は私の事でいっぱいだったから…
【佐倉鈴side END】
【卯月輝side】
…鈴と仲良くなって2日。
僕はいつもの様に屋上に呼び出されていた。
絵を描いている時は僕だって強気なのに…
人との関わりになるとどうしても弱くなってしまう。
僕は…臆病だ…
「おい、最近朝いねえけど、どこで何してんだ?」
「…い、家を…出る時間…遅くしたので…」
…気づかれてはいけない。
僕にとって唯一和むあの空間を邪魔されたくない。
鈴の命はあと少しなんだ。
せめて、その少しの間に絵を描かせて欲しい。
僕は他に何もいらないから…
鈴のために、早く絵を仕上げたいんだよ…
「…そうかそうか。だったらいつもみたいに早く教室来いよ。」
「なんで…」
「こうやってストレス発散するためだよ!!」
磯ヶ谷くん…
イケてる系の男達のリーダーが僕に殴り掛かる。
…鈴なら…
前みたいに避けるんだろうな…
僕にはそんな運動神経なんてない。
だから、当たるしかないんだ。
ードゴッ!
…ほら。
僕はノロマで鈍臭いから。
当たるしかないんだ。
しばらく殴って気が済んだのか、彼らは屋上から出て行った。
「…って…」
どんだけ殴るんだよ…身体中痛てぇ…
フラフラする体を何とか踏ん張って立ち上がる。
早く…鈴のいるところまで行かないと…
トイレって言って出てきたきりなんだから…
ーガラッ…
「え、輝どうしたの?!」
…あ、怪我してたんだ…
鈴の顔を見て安心した僕はその場に座り込む。
「何?また磯ヶ谷くん達に?」
…ここで頷けば鈴は怒り狂ってしまう。
「転んじゃって」
「そんなわけないでしょう。」
…やっぱりすぐバレるよねえ…
僕って嘘下手だなあ…
「とりあえず手当しなきゃ。」
鈴の冷たい手が僕の腕を掴む。
…鈴は日に日に弱々しくなっている。
早く仕上げないと…