【番外編完結】初恋にピリオドを
ーーーーーーパシュッ
ゴールリングに触れることなくゴールに吸い込まれたボール。
一瞬静寂に包まれたかと思うと、一気にどよめく会場。
コートの中では龍くんがチームメイトに揉みくちゃにされているのが見えた。
チームのファンの人達は誰彼構わずハイタッチをしたり、抱き合ったりして喜びを分かち合っている。
もちろん私も隣にいた金髪の綺麗な女性にハイタッチを求められたので手を合わせた。
『流石私のリューだわ!』
興奮している彼女が英語でそう言ったのを聞き、私は固まった。
まさか彼女が婚約者………?
『彼はあたなのリューなんですか?』
震える声で私は思わず尋ねてしまった。
そうすると頬を赤らめて『えぇそうよ』と答えた彼女は左手で耳に髪を掛けた。
キラリと光る指輪を私に見せ付けるかのように。
それからのことはあまり覚えていなかった。
ただ気が付いたら会場から半分以上の観客がゾロゾロと退場し終わっていた。
もちろん隣にいた彼女はもういない。
婚約者なのだからきっとロッカールームに行っているのだろう。
「あーあ、やんなっちゃう」
会えるとは思っていなかった。
むしろ会いたくなかった。
彼の婚約者がどんな女性なのか知りたくなかった。
出来るなら一生知りたくなかった。