キミの溺愛は甘すぎる。
何故か聞いてはいけないような会話な気がして、思わず立ち止まってしまう私。
その結果、盗み聞きするような形になってしまった。
「どこで覚えてきたんだ?
あんなの鈴華が可哀想だろ」
「そうだね。鈴華の鈍さを利用してるから」
どきりとした。
ふたりの口から私の名前が出てきたからだ。
先ほど、お父さんが“お前の息子”と言っていたのを思い出し、優翔の話をしているのだとすぐにわかった。
「あー、少しでも白野(しろの)に似てくれたら良かったのに。性格も全部拓哉に似てる」
私のお父さんは未央ちゃんのことを今もまだ旧姓で呼ぶ。
未央ちゃんの旧姓は“白野”といい、まさにぴったりな苗字だと思った。