銀のナイフと薬を手にして
「ん?」
「本当に、大人ですね」
「なんだそりゃ。飲む?」
半分ほど残ったコップを差し出されて、頷く。空きっ腹がかっと熱くなり、いい感じで頬が火照った。
やわらかな目元を見て、ふと、お酒ってどれくらい飲んでも大丈夫なのだろうか、と心配になる。
途端に頑丈そうな肩も顎も、本当は脆いガラスみたいに思えてくる。中岡さんの病気について、わたしはまだきちんと考えることができていない。
映画は先週始まったばかりの恋愛物だった。
邦画にしては珍しく二十歳そこそこのヒロインの脱ぎっぷりが良くて、濃密な肉体関係繰り返しながら、義父のほうがいつしか彼女に溺れて転落していく。
映像は綺麗だったけど、荒い息遣いやセックスシーンが生々しくて気が抜けなかった。
もしかしたらこの人とは一生付き合わないかもしれないのに、と思って中岡さんを見ると、ポップコーンのカップを差し出された。
子供扱いして、と小さく反発しながらもつまんだ。
すっかり頬を火照らせて映画館を出ると、新宿の街には大雨が降っていた。
「ひゃあ」
思わず間抜けな声を出してしまった。中岡さんがくくと笑う。
「ななちゃんのそういうリアクション好きなんだよなあ。和む」
「犬猫じゃないんだから」
「本当に、大人ですね」
「なんだそりゃ。飲む?」
半分ほど残ったコップを差し出されて、頷く。空きっ腹がかっと熱くなり、いい感じで頬が火照った。
やわらかな目元を見て、ふと、お酒ってどれくらい飲んでも大丈夫なのだろうか、と心配になる。
途端に頑丈そうな肩も顎も、本当は脆いガラスみたいに思えてくる。中岡さんの病気について、わたしはまだきちんと考えることができていない。
映画は先週始まったばかりの恋愛物だった。
邦画にしては珍しく二十歳そこそこのヒロインの脱ぎっぷりが良くて、濃密な肉体関係繰り返しながら、義父のほうがいつしか彼女に溺れて転落していく。
映像は綺麗だったけど、荒い息遣いやセックスシーンが生々しくて気が抜けなかった。
もしかしたらこの人とは一生付き合わないかもしれないのに、と思って中岡さんを見ると、ポップコーンのカップを差し出された。
子供扱いして、と小さく反発しながらもつまんだ。
すっかり頬を火照らせて映画館を出ると、新宿の街には大雨が降っていた。
「ひゃあ」
思わず間抜けな声を出してしまった。中岡さんがくくと笑う。
「ななちゃんのそういうリアクション好きなんだよなあ。和む」
「犬猫じゃないんだから」