銀のナイフと薬を手にして
「しかし、さっきの映画はエロかったなあ」
中岡さんがさっくり言ったので、わたしはビールを噴きそうになってから、自分で誘ったくせに、となんだかおかしくなって笑い出した。
「てっきりミステリーだと思ってたんだよ。俳優陣も豪華だから、若いななちゃんも興味あるかと思って」
と彼はちょっと弁解するように言った。
「あ、ビール空いたけど。おかわり頼む?俺はウーロン茶にするけど」
俺になった、と思いながら、つられて注文する。
「わたしはレモンサワーを。あと、きゅうりの漬物と山芋たんざくもください」
レモンサワーはカットされたレモンがたっぷり浮かんでいた。焼き鳥の脂が広がった舌がすっきりする。
「ねえ、でも最後にヒロインの子が垢抜けて綺麗になって再会するけど、あれ、ちょっと地味なときの方が良かったよね」
と訊いたら、たしかに、と中岡さんは頷いた。
「まあ、でも個人的にはちょっとくらい作り込んでるのも好きだけど」
「え、そうなの?」
と意外に思って尋ねる。
「可愛いよりは、綺麗なほうがまあ好きかな」
「それは、好感度下がった」
「なんでだよ」

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