すれ違いお見合い結婚~相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~
〈智大side〉

そんな状態が小・中・高と続けば、藍里が智大に特別恐怖を感じているのが嫌でも感じ取れるようになり激しく落ち込んだ。

勉強もスポーツも、全て藍里に好かれる為だけにやっていたのに全て無駄だったのだ。
高校卒業を間近に控えた進路の時、今まで藍里の事ばかりで別段将来の事を考えていなかった智大は圭介の何気ない一言でその後の道を決めた。

『そう言えばこの前、あいちゃんが警察官って格好良いって言ってたなぁ。
自分みたいな人間でも分け隔てなく守ってくれそうだって』

『警察官……』

ーー警察になったら好きになってもらえるのか?いや、この際好きになってもらえなくてもいい。
恐怖の対象から少しでも外してもらえたら、そうしたらもう一度俺にもチャンスが……。

そんな邪な気持ちから警察学校に入り、それこそ血の滲むような努力をした。
全ては藍里に少しでも振り向いてもらう為。
それだけを目標に頑張り、いつしか特殊班に選抜されていた。

警察の仕事は思っていたよりもずっと過酷で、学校と言う集団生活もない今、藍里との接点は全くなかった。
どうにかして藍里が格好良いと言った警察官になった今の姿を一度だけでも見てほしいと切望していたある日、母親から突然言われた言葉は正に智大にとって青天の霹靂だった。

『智大、あいちゃんとお見合いしてみない?』

藁にも縋る思いで、する。と即答した智大の姿を見て、後ろで圭介が腹を抱えて笑っていたのは後で知ったことだった。
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