すれ違いお見合い結婚~相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~
「俺が……不安にさせたくなくて説明しなかったのが悪かったんだ。今までも、藍里が傷つくのが分かっててあんな言い方や態度しかとれなかった……。
嫌われているのも怖がっているのも分かってて、でも離したくなくて……無理矢理に藍里の自由を奪ってたんだ……こんなの、嫌われるのも当然で……」

「智君……私、智君の事ずっと怖かったけど……でも、嫌いではなかったよ……?」

その言葉に智大は瞳を揺らした。
いつも無表情で感情が読めなかったのに、今は不安で仕方ないのだと言うのが分かる。

包み込まれていた手を動かして智大の手をきゅっと握ると智大は目を丸くした。

「藍里……?」

「私が知らないところで、何度も守ってくれてたんだね……。知らなくて、ごめんね……」

「……知られないようにしてた。藍里は悪くない」

「うん……だから知れて嬉しかった……。ありがとう、ずっと守ってくれてて……窓から飛び込んできた時もビックリしたけど……すごく、格好良かった……」

ぽろぽろ涙を溢れさせながら笑顔でそう言うと智大は微かに頬を染め、そして嬉しそうに微笑んだ。
涙を長い指で掬い取ってくれながら優しく頭を撫でられて、この時ばかりは智大へ対する恐怖は一切感じなかった。
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