すれ違いお見合い結婚~相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~
本当は食欲がなくなるほど悩んでいることがあった。

智大に相談したくても中々言い出せず、いつ切り出そうか悩んでいたのだけれど、智大から問い掛けてきてくれた絶好の機会も咄嗟に誤魔化してしまい、みすみす逃してしまった。

ーー……今日も言えなさそう……。

あの日から毎日届く差出人不明の一言だけ書かれた白い手紙。
“会いたい”、“僕の運命の人”、“僕の天使”、“一目惚れです”、“気付いて”、“こっちを見て”。
六回目からは怖くて中を見るのもやめてしまったが、いつか智大に相談するために全て捨てずに取っている。

溜まっていく手紙に何が書かれているのか、誰がどんな目的で届けているのか。
考えても答えが出ない問題と気持ち悪さに藍里が無意識に溜め息をつくのを智大はじっと見つめた後、リビングのテレビ台の引き出しに視線を向けたのに藍里は気付かなかった。

そして、その後も封筒の事を相談できないまま、智大の同僚である二人に会う日がやって来てしまった。
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