すれ違いお見合い結婚~相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~
「昨日、兄貴から連絡が来てたんだ。藍里が変な男に好かれたって」

「変な男……」

言われて、思い浮かべるのは吉嶺。
吉嶺の言動にたまにゾッとすることがあって、藍里はブルッと身震いした。

「念のために様子を見に行ったら、見事に言い寄られてたからな。気付いたら横から入ってた」

「あ……助けてくれて、ありがとう」

まだ言えてなかった事を思い出して礼を言うと、智大は、別に対したことしてない。と顔を反らした。

「圭介さんにも心配してもらって……今度お礼言わないと……」

「……前から思ってたが、何で兄貴はずっと名前呼びで、しかも他の男達と態度が違うんだ?」

「態度?」

「……他の男と比べると少し距離が近いし、話す回数も多い」

言われて思い起こせば、藍里が他の男性に恐怖を感じ始めて名前を呼ぶこともなくなり、距離を開け始めた中でただ一人、圭介だけはずっと名前で呼んでいて、近くはないがそこまで遠くもない距離間で話していた気がした。

「えっと、圭介さんは……困ってたらいつも助けてくれたり慰めてくれたりして……まるで本当のお兄さんみたいだったから、そんなに怖くなかったのかも……」

「それだけか?」

「え?」

「例えば、本当は兄貴の事が好きだったとか……結婚もどちらかと言えば兄貴としたかったとか……」

「そんなことないっ!!」

智大から言われた言葉が思いの外ショックだったのか、気付いたら自分でも驚くほどの声量で否定していた。
周りの客も何事かとこっちを見ていて、藍里は恥ずかしさのあまり俯くがもう一度だけ、そんなことない……。と呟いた。
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