すれ違いお見合い結婚~相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~
買い物をしている間も手は繋がれていて、藍里のはドキドキするやら緊張で手が震えるやらで、とても忙しかった。

今回は同級生に会うこともなく安心していたのだけれど、ふと誰かの強い視線を感じて振り返るのを繰り返している。
するとさっき、公園で会った吉嶺と似た服の人がモールの角を曲がって見えなくなるところだった。

ーー……警察の人? 

このようなショッピングモールで、警察官が制服姿で堂々と歩いているのは珍しい。
何かあったのかと首を捻ってから前に向き直ると、智大はいつの間にかスマホを取り出して操作し、すぐにポケットに直していた。

「他に見たい物や買いたい物は?」

「え?も、もうないけど……」

「なら、少し俺に付き合え」

今まで智大が買い物に付き合えと言ったことがなかったので驚き目を丸くするが、すぐに藍里は頷いた。

すると智大は藍里の手を少し乱暴に引くと、さっきより大きめの歩幅で歩きだした。
身長差は勿論だが、足の長さが違いすぎるので、智大の歩幅では藍里はどうしても小走りになってしまう。
その歩みはたまにゆっくりに……そう思ったら早くなるのを繰り返した。

智大はさらに角を曲がったりU ターンしたり、エスカレーターで下ったり上ったりと不規則な動きをして藍里を混乱させると、藍里は若干息を切らせながら智大を見上げた。

「と、智君……っ……何か、探してるの……?」

「ああ……いや、帰るか」

あれだけ振り回されたのにも関わらず、結局何も見たり買ったりしなかった。
智大の行動に疑問符を何個も浮かべるが、いつもとどこか違う智大に聞くことなど出来ずに駐車場に戻り、家へと戻ったのだった。
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